名古屋工業大学電気情報工学科
物性デバイス、電力制御分野
工学博士 増井 寛二

トラディショネル・バックハウス
石窯名人 猪原義英


石窯…解字的には石で作られた、窯(カマ・カマド)と云う意味。

石… 石の塊、石がばらばらになった状態の石ころの意。
   窯に使う石についてですが、石というと岩石をイメージし粘土、土、砂、などは石と思いませんね。
   地球を解析すると、地殻、マントル、核とに分けられ地殻は地球表面の30〜40kmの層からなり
   大陸部分の厚い層の上部は珪酸塩の多い(約70%)花崗岩、下部は珪酸塩が少なく(約49%)
   鉄、カルシウムなど鉱物を多く含む玄武岩から成り立っています。
   これら岩石の分解によって生じたものが土であり土壌とも呼ばれ、土は粒子の大きさにより、
   礫・粗砂・細砂・シルト・粘土に分類されます。したがって珪素を含む地表の岩石・小石・砂利・
   砂・土などで作られた窯は全て石窯である。
   また窯の中の温度を1000度以上常に上げるうちに,窯の内面は石に変化します。

窯… 穴と「焼く」を意味する羔からなりかわらを焼く穴の意。
   .=英語のOVEN・・・天火・蒸し焼き料理の竈(カマド)の意味。
   カマドとは火の三方を壁で囲んだ設備で、窯(OVEN)は竈に天井と出し入れ用
   ドアを付け内部の気密性を高め高温で十分な湿度を保つ様にしたもの。


石窯に使える良い石とは???

 耐火煉瓦など珪藻土・玄武岩質の溶岩・花崗岩の大谷石などは、ポーラス状(多孔質)の材質で、
 酸化しにくく、衝撃による強度が有り、人体に安全かつ有益である。
 そういった中で耐火煉瓦は定形で使い易いし、また溶岩は自然のものなので、人間に必要な微量
 な鉱物が含まれ優位性が高いと思います。また大谷石は風化が激しく衝撃に弱いという弱点が
 あります。


石窯の特徴

長所…  石窯は石の輻射熱、すなわち近赤外線や遠赤外線で窯内部に置かれたパンなどを焼く。
       この遠赤外線とは、水の原子を振動させ、振動した原子は次の水の原子を振動させる。
       その際生じる摩擦熱が熱源となる。これにより、早く中心部分まで熱が伝わり、焼成による
       パンの水分の蒸散を少なくすることができる。
      水分量が保たれるということは老化が遅い。また防菌効果があり、微量金属ミネラルがを
      摂取することもできる。化学燃料を使用しなくともパンを焼くことができ、環境に優しい
      食品加熱システムといえる。 
      遠赤外線は低温でパンのタンパク質を旨味成分であるアミノ酸に変える事が出来るので、
       パンの味がとても良いのです。

短所…  窯の材料は石なので重く持ち運べない、また場所も広く必要とし、ススや灰の始末で
      窯周りが汚れやすい。薪を焚きパンを焼く高度な経験と技術を要す。